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更新日:2023年1月30日
研究報告のページ(QRコード)
静岡県農林技術研究所は2020年に創設120年を迎えました。そこで、2001年度以降の20年間における試験研究の概略を取りまとめた「研究成果レビュー(2001~2020)」が編集され、「静岡県農林技術研究所研究報告第15号(令和4年3月発行)」に併録されました。なお、研究報告は当研究所のホームページから閲覧可能ですので(QRコードを参照)、本稿と合わせて閲覧していただけると幸いです。
農林技術研究所本所(旧農業試験場を含む)と伊豆農業研究センター(旧農業試験場南伊豆分場を含む)では、この20年間に約240の試験研究課題に取組んできましたが、「研究成果レビュー」では継続課題をまとめるなど、174項目が研究成果として部門別に掲載されています。各項目では試験研究の背景、目的、主要成果が簡単に書かれているので、試験研究の概略を知ることができます。その中には、最近の「みどりの食料システム戦略」で注目される、燃油や肥料の削減技術、農薬の代替技術の開発に取組んだ試験研究もあり、今後の研究のヒントになると思われます。
また、「研究成果レビュー」には本文の成果概要とともに、2001~2020年に研究所が公表した「成果情報」、「あたらしい農業技術」のタイトルリストを巻末に掲載しています。このうち、2007年以降の資料は研究所ホームページから閲覧可能ですので、興味がありましたら検索をお願いします。
なお、「研究成果レビュー」は、現役の研究所職員が過去の資料や試験成績書等を確認しながら、執筆しました。本研究所でも世代交代が進んでいますが、過去の研究成果や経験が次世代に継承されることを願っています。
立毛中の草姿(左:誉富士、右:令和誉富士)
平成17年に当研究所が育成した水稲酒造好適米「誉富士」は、県内約70ヘクタールで栽培され、26の酒蔵が醸造を行っており、「誉富士ブランド」として普及しています。
しかしながら、「誉富士」の収量や品質が安定しなかったため、両欠点を克服した新品種を育成しました。
本品種は新しい時代の「誉富士」であることを表わした「令和誉富士」と命名され、令和4年1月に種苗法に基づく品種登録出願をしました。「誉富士」より約12%収穫量が多く、玄米外観品質が良好で、品質を低下させる原因となる収穫前の発芽が起きにくいなど、栽培特性に優れています。
また、静岡県酒造組合による試験醸造の結果、醸造特性も「誉富士」と同様に優れると評価されています。
本品種は、令和5年産から一般栽培が予定されており、同年度内に地酒の醸造が開始されます。
(農林技術研究所 水田農業生産技術科 主任研究員 加藤 泰久)
切り枝専用ほ場でのジョイント栽培
伊豆地域では、観光資源であるカワヅザクラの切り枝を観賞用として商品化する取組が進められています。
カワヅザクラは、生育が旺盛な若い樹では花が着きにくい上、立木から伐採した枝は揃いが悪く、切り枝として出荷する際の調整が困難です。
そこで伊豆農業研究センターでは、カワヅザクラ切り枝専用ほ場で、ナシなどの落葉果樹で用いられている「ジョイント」栽培により、揃いの良い切り枝を出荷する技術の確立を目指しています。苗木の先端を湾曲させて隣の樹に接ぎ一株とし、伸長する側枝を水平に伸ばす「ジョイント」仕立てにすると、定植から切り枝収穫までの期間短縮(早期成園化)、花数の増加、切り枝の均一化、作業性改善の効果が見込まれます。河津町と南伊豆町では、ジョイント仕立てのカワヅザクラ切り枝専用ほ場の導入が始まり、切り枝生産者団体の組織化も図られています。今後、採取した切り枝を通常の開花期よりも早い時期に出荷する処理の開発による、観光宣伝や春を先取りしたカワヅザクラ切り枝生産・販売の体系化が期待されます。
(伊豆農業研究センター 生育・加工技術科 科長 馬場 富二夫)
お問い合わせ先
静岡県農林技術研究所
〒438-0803 静岡県磐田市富丘678-1
電話番号:0538-35-7211 ファックス番号:0538-37-8466