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更新日:2016年10月4日
果樹研究センターは、静岡市清水区駒越から清水区茂畑に移転し、1年が経過しました。当センターは、県営畑総区域内の約5.4haの平坦な立地条件にあり、県の果樹産業の発展に貢献するため、新たな研究にも取り組み始めました。
その1つが果樹の大規模省力栽培技術の開発です。生産者の高齢化や後継者不足により、省力技術が求められていますが、柑橘の垣根型樹形、自動防除ロボットや収穫作業補助車を総合的に開発することで大規模経営の実現を図ります。また、小型の無人航空機を利用し、柑橘の成育診断や収量予測技術を開発するとともに、無人航空機による柑橘の病害虫防除や施肥技術の開発にも取り組んでいます。
2つ目は、魅力ある果実の開発です。当センターが育種した、ミカンの極早生品種‘静丸早生’や、梨の‘静喜水’などに加え、新たに中晩柑の‘静姫’が本年8月に品種登録されました。また、温州ミカンの機能性表示や青色LEDによるミカンの長期貯蔵など、さまざまな手法で魅力ある果実の開発を進めます。
昨年10月に移転して以降、果樹研究センターの見学者は、県内外及び国外を含め1,300人以上で、当センターへの期待の高さが感じられます。これからも静岡県の果樹産業の更なる発展のため、先端技術開発に努めてまいります。
県内では、約700haの小麦が栽培されており、そのほとんどが「イワイノダイチ」という品種です。「イワイノダイチ」は多収品種として平成17年に奨励品種(県としてのお薦め品種)に採用されましたが、近年は登熟期の気温が高く登熟不良が発生しやすく、生産量が不安定になりやすいという問題が見られます。
一方、平成27年度からは、県内学校給食において、国内初となる国産小麦100%のパンと麺類の供給が始まり、このうち県産小麦が40%利用されていることから、小麦の安定供給がより一層求められるようになりました。
このため、当研究所では「イワイノダイチ」と同程度の時期に収穫が可能で、多収かつ安定した品質を持つ品種の選定を進め、平成28年2月に穂が白色の「きぬあかり」を奨励品種に採用しました。「きぬあかり」は、「イワイノダイチ」に比べて20%程度多収で、小麦粒は丸々と充実して揃いが良いなど、品質が安定して優れていることから、農家収益の向上が期待できます。
また、小麦タンパク質成分であるグルテンが改良されており、粉の色を悪くする灰分の割合が低いことなどから、麺での評価も優れています。超強力粉とブレンドした材料を用いたパンは、「イワイノダイチ」を用いた場合とほぼ同等であり、給食のパンにも十分対応できます。現在、現地ほ場で大規模な試作を行っており、今後、県内全域への生産拡大を進めてまいります。
(農林技術研究所 作物科 主任研究員 外山祐介)
伊豆及び東部地域では、温暖な気候を活かし、古くからマーガレットの栽培が盛んで、特産品目となっています。しかし、近年、夏季の高温による生育不良や、開花遅延、花弁の着色不良といった品質の低下が問題となっています。このため、伊豆農業研究センター栽培育種科では、高温に強く、商品性の高いマーガレットを目標に、切り花用マーガレット2品種と、鉢物用マーガレット1品種を育成したので紹介いたします。
① プリモプリンセス(切り花用)
花粉のない、白花の一重咲きで、小輪タイプの品種です。耐暑性に優れ10月中旬から開花します。茎が硬いため、花が垂れ下がらないのが特徴です。
② サニーレモネード(切り花用)
黄色の一重咲き、花径の大きさは5cm程度と中輪の品種で、12月上中旬に開花します。通常、切り花用のマーガレットは60cmの長さに調整されて出荷されますが、サニーレモネードは出荷可能となる60cm以上の切り花の発生割合が高い品種です。
③ ブリアンルージュ(鉢物用)
花粉のない、赤紫色、一重咲きで中輪タイプの品種です。極早生で、秋から翌年の春まで連続して出荷することが可能です。分枝性も良く、高温期でも花弁の色があせない特徴を持っています。
これら3品種は、平成28年4月4日に品種登録出願し、7月27日に出願公表され、10月以降に試験販売が開始される予定です。3品種の導入により、生産者の所得向上につながることが期待されます。
(伊豆農業研究センター 栽培育種科 主任研究員 勝岡弘幸)
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