• 携帯電話向けページ
  • Other language
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • 組織(部署)から探す
  • リンク集
  • サイトマップ
  • ホーム
  • くらし・環境
  • 健康・福祉
  • 教育・文化
  • 産業・雇用
  • 交流・まちづくり
  • 県政情報

ホーム > 組織別情報 > 経済産業部 > 農林技術研究所 > 研究所ニュース > 詳細

ここから本文です。

更新日:2018年12月1日

静岡県農林技術研究所

No.54/ 2018年12月/ 研究所ニュース

視点

主伐・再造林に向けたエリートツリー種子の早期生産技術の開発   技監 佐野信幸

画像:

エリートツリー採種用母樹

静岡県のスギ・ヒノキ人工林は利用可能な時期を迎えており、森林資源を循環利用していくためには、主伐・再造林を進めていく必要があります。今年度(H30)より「ふじのくに林業成長産業化プロジェクト」が始まり、これまでの利用間伐に加えて主伐に取り組んでいくことになりました。
森林・林業研究センターでは、平成33年に主伐を本格的に開始できるように実行体制を整備することを目標として、再造林に必要なエリートツリー苗木100万本の種子を生産するために、今年度(H30)から新成長戦略研究「エリートツリー種子の早期生産技術の開発」に取り組んでいます。
エリートツリー(特定母樹)とは、林野庁が定める基準(成長が良く材積が在来系の概ね1.5倍、強度が平均以上、通直、花粉量が在来系の概ね半分以下)を満たしたものです。林野庁の基本方針により今後の造林は特定母樹からの種苗で行うこととされています。これまでの新成長戦略研究などで、スギ19本、ヒノキ9本を選抜し、全国に先駆けて農林水産大臣の指定を受
けることができました。
種子を計画通り生産するためには、若い母樹から種子を早期に大量に生産する技術開発が必要です。新成長戦略研究で、①母樹増殖の最適条件の解明、②若齢ヒノキの着花促進技術の開発、③種子増産技術の確立、④受粉効率を高める技術の確立、に取り組んでいきます。選抜したエリートツリーから穂を採取して挿し木で増やし、ビニルハウスを使用した閉鎖型採種園内で、エリートツリーどうしの交配により品質の高い種子を生産します。
西部農林事務所育種場にエリートツリー採種用苗木を提供して開発技術を移転し、事業的にエリートツリー閉鎖型採種園のハウス建設を進め、平成31年秋には種子を本格生産されるよう技術協力を行っていく予定です。
主伐・再造林を進めていくためには、森林所有者に収入が還元されないと主伐の意欲が喚起されないので、主伐の生産性向上や低コストでの再造林の技術開発について、コンテナ苗の規格や、低密度植栽の本数・下刈り回数、効率的な一貫作業システム、シカ等獣害防除対策等の課題に引き続き取り組んでいく必要があります。

研究情報

花や果実からパン利用に適した酵母の選抜と新商品開発への応用

画像:桜の恵みあんぱんの外観

桜の恵みあんぱんの外観

静岡県には、温暖な気候を利用した豊富な種類の農作物や、歴史的価値のある自然環境が多くあります。このような植物資源に生息する酵母等の微生物を新たな商品開発に繋げることで、既製品と比べ風味などに差別化が期待できます。これらを活用する発酵食品の中で、パンは6次産業化で開発された商品の多い食品の一つです。そこで、本県では新成長戦略研究「食の都しずおかの微生物を用いた発酵食品ビジネスの創出」(H27-29)において、各研究所が連携して有用微生物の開発に取り組み、当所ではパン利用に適した野生酵母を花や果実から採取・選抜し、製パンでの応用性を研究しました。
研究では、花や果実から825株の酵母を単離し、その中から、発泡性、安全性やパン生地の膨張能が高い3株(ブルーベリー花、イチジク果実及びミシマザクラ花由来)を選抜しました(図参照①)。また、これら酵母で試作したパンには、甘みや発酵バターの風味が付与されることがわかりました。
その後、上記3株は、遠州地域の食品企業等で活用され、ミシマザクラ花由来の酵母は新商品としてパンの試験販売に繋がり(図参照②)、さらに、ブルーベリー花由来の酵母は、パンの商品化やクッキーの風味付けに活用されました。            
                (農林技術研究所 加工技術科 主任研究員 豊泉友康)

果樹における土着天敵の保護・利用による害虫管理技術の開発

画像:サビダニを捕食するカブリダニ

サビダニを捕食するカブリダニ

これまで果樹で発生する微小害虫は農薬によって防除されてきましたが、近年は薬剤抵抗性を獲得した害虫が確認され、農薬のみによる防除が困難となっています。そこで、当研究センターでは果樹園やその周辺に生息する天敵(土着天敵)を活用した害虫管理技術を開発しています。
 一般に土着天敵は害虫と比較して農薬に弱いことから、生産現場では十分に活用されていませんでした。そこで、土着天敵に影響の少ない農薬を選抜し、生産現場で利用して土着天敵の保護効果と害虫の防除効果を確認しました。その結果、土着天敵のカブリダニ類や捕食性昆虫が保護され、害虫のハダニ類やサビダニによる被害は経済的に問題のないレベルに抑制されました。なお、果樹園には先に述べた害虫以外にも様々な病害虫が発生するため、農薬の種類だけでなく散布時期にも注意し、物理的・耕種的な対策も含めて防除体系を構築する必要があります。
 現在は、植物を活用して農家自身が土着天敵を簡易に増殖し、園地で利用する技術を開発しています。これにより、土着天敵の発生が安定し、より持続的な害虫管理が期待されます。
           (果樹研究センター 果樹環境適応技術科 主任研究員 土田祐大)


お問い合わせ先

静岡県農林技術研究所
〒438-0803 静岡県磐田市富丘678-1
電話番号:0538-35-7211 ファックス番号:0538-37-8466