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更新日:2011年4月1日
多かん水
少かん水
無かん水
茶園のかん水は、夏季の干ばつ対策が主体です。近年の気象状況では、降雨が不安定になっています。このため、夏季以外でも一番茶の生育に影響する春季は、かん水管理が重要になっています。
そこで、土壌水分の消費特性を基にした春季のかん水管理の考え方と、春季に干ばつ条件になった場合の一番茶への影響について説明します。
かん水管理は、茶園の消費水量を基準に考えます。3~4月に成木茶園の降雨を遮断すると、土壌水分の状態を表す土壌のpF値は7~11日程度、平均9.3日でpF2.3に達しました。茶樹の生育にはpF1.8から2.3程度が適していることから、茶園では土壌pF2.3がかん水の開始点とされています。春季においても無降雨が10日程度連続すれば、かん水が必要な水準に達するということになります。
春季の茶園消費水量は1日あたり2.5mmで、気象条件によっては3.5mm程度に高まることもあります。降雨がない場合、消費量を補って適切な土壌水分を維持するためには、10日間隔で10aあたり25tのかん水が必要です。
夏季の消費水量は1日あたり3.5~6mm程度です。これまで春季のかん水の必要性は低いとみられてきましたが、気象条件によっては夏季と同等程度の消費水量になります。このため、春季の水管理の重要性は高く、夏季に準じた注意が必要と考えられます。
土壌水分が減少すると蒸散量が制限され、晴天時日中の樹冠面温度が上昇します(第1図)。気温が低いため夏季のように葉の褐変など干害症状は現れませんが、気孔開度が抑制され、光合成も制限されることから乾物生産に影響します。
成木茶園で春季に降雨を遮断した場合は、一番茶新芽の伸長と葉面積拡大が抑制されます。3葉期頃から摘採期にかけての違いが顕著でした。
一番茶収量は20日以上降雨がない場合に影響が生じ、40日前後の降雨遮断では30%程度減少しました。出開き度や新葉数など生育進度指標には影響がみられませんでしたが、乾物重の差からみると最大3日程度の生育遅延とみなすことができます。
品質低下や成分変化への影響は明確でないことから、降雨不足は、品質よりも生育抑制や遅延が問題と考えられます。
(担当/茶業研究センター)
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